若の瞳が桜に染まる
もしそうだったとしても、日和が責任を感じることじゃない。

俺が向き合うべきことだったんだ」

「…うん」

力無く日和は頷いた。

こんなこと、すんなり受け入れられる筈もないし、日和のことだからどうしても蘭に気持ちを寄せてしまうのだろう。

我久の中では終わったことと認識していても、日和にしてみればそうではない。

その終わりの無いように思える沈黙を、我久は黙って耐え忍んだ。

ここで話題を変えて楽になろうなど、身勝手なことはできなかった。

「……忘れる。
けじめをつけなきゃならなかった蘭さんの気持ちを考えると、それが一番だよね…」

小さくまるで一人言のように呟いたのだが、我久はしっかりと聞き取れた。

その結論はやはり蘭の心情に寄り添っていて、そこに至るところが凄いなとただただ感心していた。
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