若の瞳が桜に染まる
「あ…これ」

オルゴールの箱の底が少し浮き上がった。怪しく思ってめくってみると…。

「日和!
ここを出るぞ」

急いで立ち上がった我久は、扉を開こうとするも、何かにつっかえているようで中からは開かなかった。

「この扉…。
老朽化で中から開かないんだ…。
まずいな」

「…どうしたの?」

「GPSだ。
中に仕込まれてた。
俺たちの動向を探るつもりなのかな。

とにかく、このことを連絡しないと」

「うそ…。
ごめん、なさい…」

「いや…。
母親の形見だなんて、嫌な手を使ってくる。

もうそろそろ旬が探しに来るよ。そしたらここから出られる」

GPSの送り主は、柊忠義で間違い無さそうだった。だが、目的までは掴みきれない。
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