若の瞳が桜に染まる
部屋には外から鍵がかけられていて出られない。ベランダもあるが、その窓も外に南京錠が取り付けてある。

逃げる気を起こさせるつもりもないようだ。

何もすることなく、日は暮れた。

なんとなくポケットに触れると、中からは我久から貰った栞が出てきた。

「…ワスレナグサ」

それを見ただけで、少し心が安らいだ。

今となっては唯一の我久との繋がり。日和にとっては、それだけが支えだった。
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