若の瞳が桜に染まる
我久はその太い幹にそっと手を添えてみる。

温かい。
風で枝が大きく揺れても幹は全然びくともしない。
強いんだな。

「エドヒガンっていうの。
たぶん…千年前からここにあるんだと思う」

「千年!?
そんなに前から」

「うん。凄いね」

大きなエドヒガンの花びらの散る中、我久は壮大な歴史を感じていた。

この木を眺めながら、千年前の人は何を思ったんだろう。
この木の下でどんな思い出を作ってきたのだろう。

それらを全部、このエドヒガンは見守ってきたんだ。

言うなら今だ。
そう言われた気がした。

「日和。

俺と結婚してください」

「え?」

本当にきょとんとした目を向けられ、我久は顔が熱くなってきた。
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