若の瞳が桜に染まる
だが怖いもの知らずの楠井。嫌なことは嫌とはっきり言うタイプだった。

「えー。これは若手の親睦会ですよ。それに吉田さんが来たら男女のバランス崩れるじゃないですか」

「そう言わずにさー。
そこをなんとか!お願い!」

後輩に頭を下げる先輩。

「…わかりましたよ。仕方ないですね」

完全に力の逆転を見た我久だった。

「じゃあ、参加は五人ってことで。
詳しくはまた連絡しますね」

楠井は仕事に戻った。
流れに逆らえず、我久は飲み会に参加することとなっていた。

「いやー、良かったな。
吉田とご飯だなんて楽しみだぜ」

「変なことして訴えられないように気を付けてくださいね」

「お前もな。柊が大人しいからって何でもありだと思うなよ」

「思いませんよ!
俺たちは…」

最悪合法なんで。
そう言いそうになって口を止める。
こんな発言、事情を知ってたとしても危ない奴に思われる。今、自分で自分を危ない奴だと思った。

ヒヤッとした我久は、状況を誤魔化そうと不自然に立ち上がった。

「…さーてと、俺休憩行ってきます」

突っ込まれる前に逃げることを選んだ。
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