若の瞳が桜に染まる
屋上へ行くと、既に日和が作業をしていた。

「お疲れ様」

「あ、我久だ」

鉢を抱えたまま我久を見ると、再びせっせと作業を続けた。

我久は扉の側の階段に座って、ぽかぽかと陽に当たりながらそんな日和を眺めていた。
安らぎの一時。今この時がずっと続けば良いのにと頭をかすめる。

「そうだ、日和。
このあと引っ越しだけど、大丈夫?」

既に日和は屋敷に住んでいるものの、荷物の移動はまだだった。

「うん。そんなに荷物も無いから」

二人の仕事が終わってから、日和が少し前まで住んでいた家から天祢組の屋敷への引っ越しが行われることになっていた。
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