クジ引き
あたしは小さく呼吸を繰り返しながら移動し、玄関先にいる男を見た。


男はまだ固く目を閉じている。


気絶してしまったのか、それとも薬でも飲まされていたのかもしれない。


この男をバラバラにして送り返さないと、次はあたしの番……?


「そんなの……嘘だよね……?」


そう呟く声が震える。


何より、あたしの顔写真を勝手に利用されていると言う事が恐ろしかった。


何が目的なのかわからないけれど、相手はすでにあたしの事を知っているのだ。


得体のしれない者に見られているという恐怖が、ベッタリと体にまとわりついてくるのがわかる。


「この人をバラバラにって……できるわけないじゃん」


あたしはそっと男に近づいた。


さっきは驚いて顔もよく確認しなかったけれど、ととのった顔をしている。


今は顔色が悪いけれどこんな事をされていなければ、きっとすごくカッコいいはずだ。
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