クジ引き
「へ……?」


「そうしなきゃ君の命が危ないんだろ?」


その言葉にあたしはグッと下唇を噛みしめた。


「朝日は何を知ってるの?」


「俺は何も知らない。ただ、相手を攻撃しない事。警察に通報しない事。そして、相手に殺されなければいけない事だけ、覚えてる」


朝日は淡々とそう説明した。


嘘をついているようには見えない。


「『相手に殺されること』って……相手ってあたしの事?」


「あぁ」


朝日は躊躇なく頷いた。


「どうして……?」


「わからない。でも、俺を殺さなきゃ君が危険な目に合う事はわかってる」


その言葉にあたしは顔をくしゃくしゃにした。


今にも涙があふれ出してきそうだ。


「朝日もハテナマークのくじを引いたの? あのくじは一体なんだったの!?」


「くじって何のことだ? なにも覚えてないんだ」


「そんな……」


今の朝日に必要のない情報はすべて記憶から消されているのかもしれない。
< 39 / 139 >

この作品をシェア

pagetop