クジ引き
☆☆☆

それから店員さんにくじ引きについて聞きに行ったけれど、ハテナマークのくじの存在は誰1人として知らなかった。


あのくじの箱にいつの間にか紛れ込み、それをあたしが引いてしまったようだ。


くじの箱に触れる事ができるのは、3000円以上買い物をしたお客さん全員と、店員さんになる。


くじ引きのためにできた列を思い出すと、その中からハテナマークのくじを入れたのが誰なのか特定するのはとても無理そうだった。


「大丈夫?」


落ち込んでいるあたしに、朝日がそう声をかけて来る。


あたしは思わず笑っていた。


「大丈夫だよ。朝日の立場に比べればあたしにはまだ希望があるから」


あたしはそう返事をして、朝日の手を握りしめた。


いざとなれば、最後の最後には、この手を切り落とすしかないのかもしれないと思いながら。
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