クジ引き
好きな気持ち
学校にいてもあたしは朝日の事が気になっていた。


朝日の事だから、きっと今も大人しく家にいてくれているだろう。


だけど何かが起こって家からいなくなっていたら?


そう考えると心の中がざわついた。


朝日からすれば洗脳が解けて自分から逃げ出す事ができれば、それが一番いい事だ。


でも、そうなればあたしと朝日は二度と会えなくなってしまうだろう。


結局、学校にいる間あたしはずっと朝日の事を考えていた。


考えれば考えるほど、この感情には好きという言葉が合うんじゃないかと思えて来る。


放課後。


「じゃぁ、明日ちゃんと写真撮ってきてね!」


そう言う菜々花に手を振ってあたしは家へと歩き始めた。


歩調は自然と早くなっていき、家の屋根が見えるとほとんど走るような状態になっていた。


家の玄関が見えた時あたしは足取りを緩めた。


玄関前に誰かがいる。


朝日?


いや違う。


女の人だ。


少し警戒しながら玄関へと近づくと、それが吉田のおばちゃんだと言う事がわかった。
< 54 / 139 >

この作品をシェア

pagetop