クジ引き
不安
もし、仮に。


万が一に。


朝日が殺人犯だったとしたら?


その頃の記憶をすべて消されて景品になっているのだとしたら?


景品には殺しても問題ない人間が選ばれている。


という考えが浮かんでくる。


「まさか、殺人犯だなんて絶対に嘘だよ」


授業中、あたしは小さく呟いた。


文哉と菜々花のせいで気が散って全く授業内容が聞こえてこない。


頭の中は朝日が殺人犯かもしれないという事ばかりが回っている。


殺しても問題ない人間が選ばれているとすれば、景品になる可能性があるあたし自身も死んでいい人間だと言う事になる。


そんなの、どう考えてもおかしい話だ。


あたしはひっきりなしに手のひらをこすり合わせ、自分の気持ちを落ち着かせていた。


死んでいい人間なんていない。


殺していい人間なんていない。


子供でも理解しているような事をまるで呪文のように繰り返したのだった。
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