クジ引き
ノコギリ
お風呂場からシャワーの音が聞こえる中、あたしはリビングから玄関へと移動していた。


下駄箱を開けてそこに入っているノコギリを手に取る。


大きなノコギリはやっぱり重たくて、刃に触れてみるととても冷たかった。


あたしはそれを持ち、脱衣所の前へと移動した。


シャワーの音が止まり風呂場から出て来る音が聞こえて来る。


ノコギリの柄をグッと握りしめる。


ノコギリでは一気に殺すことはできない。


ナイフで一突きして殺してからにしようかとも思ったが、やり方を変えてもいいのかどうかがわからなかった。


殺さずにじわじわと切断することが相手の望みなら、それに従うしかない。


その時だった。


脱衣所のドアが開き、朝日が出て来た。


あたしは朝日の前に立ちはだかる。


目の前に立っているあたしに目を丸くする朝日。


しかし、手に持っているノコギリを見ると穏やかな表情になった。
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