しょうがねーな、まったく。
あぁ、もう、ムカつく! ムカつく!

なんで、私、上手く言い返せないの?

もしかして、もしかしたらだけど..........

あいつの言ってるようなことが、いつも心のどっかに引っかかってるから?


「じゃあな、翼。」

「うん。またね、のぞみちゃんパパ。」

「バイバ~イ、つばさくん。」

「バイバ~イ。」


って、待ってよ。 帰っちゃう訳?

最後まで勝手な奴。

まだ話、ついてないでしょうが。


「ねぇ、ママもバイバイ言って。」

「え?」

「早くしないと帰っちゃうよ。お友達とサヨナラする時はバイバイでしょ?」

「あぁ、うん。そ、そうだね。」

「早くぅ。」

「希ちゃ~ん、バイバ~イ。あの、ありがとうございました~!」


いけない、いけない。

スッキリはしないけど、ここは翼の言う通りだ。

怒りに任せ、イイ大人が拗ねて見せるのは良くない。

一人親だからこそ、常にこの子の手本でいられるよう、挨拶とか礼儀とか、ちょっとしたことに気をつけるべきなのに。


街頭にほんのり照らされた園門の近くで、ピョンピョン飛び跳ねながら手を振る希ちゃんの姿が見える。

暗くて顔は見えないけど、その横で、あいつも手を大きく振っている。

多分、根っから悪い人じゃないんだろうな。

「初めまして」が、こういう出会い方じゃなかったら。
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