しょうがねーな、まったく。
退社時刻までに何とか頼まれた見積書を仕上げ、ダッシュで保育園に迎えに行くと、教室に翼の姿はなかった。

ってことは、もしかしてまたあいつに遊んでもらってるとか?

どんだけ懐いてるのよ、もう。

よりによって、あんな性格の悪い奴に。


でも、パっとみた限り、鉄棒の付近には誰も見当たらない。

どこにいるのかなと思い、キョロキョロしていると、ニコニコしながら近付いて来た由貴子先生が、得意げに園庭の隅っこを指差した。


「木になってる柿、園長先生が獲ってもいいって言ったもんだから、必死になってるの。たまたま落ちてたのを拾った子がもらったから、みんな欲しくてしょうがないみたい。」

「なるほど。」

「でも、まだちょっと時期が早いからそんなに落ちては来ないし、子供じゃ届かないでしょ。そしたら、希ちゃんのパパが肩車してくれるって言うから。」

「そうなんですか?」

「ええ。ほら見て。」

「はい.....。」


言われてみると、薄暗い中でもぞもぞ動く人影が見える。

キャッキャッと騒ぐ声も聞こえて来るし、子供たちが楽しんでるのは間違いないようだ。

だけど、あの場に行くのにはちょっと勇気が要る。

この前も喧嘩しちゃったし、声かけづらいよな..........
< 26 / 102 >

この作品をシェア

pagetop