しょうがねーな、まったく。
バタバタしながら準備を続けているうちに、もうすぐ約束の時間だ。

何だかすごくドキドキする。


それも仕方ない。

そもそも我が家に誰かを入れること自体、めったにないことだ。

学生時代の友達が何度か遊びに来たことは会ったけど、未婚のくせして、無理矢理出産するって決めてからは、親ともほとんど連絡を取っていない。


なのに、こんな形であいつを迎え入れることになるなんて驚きしかない。

第一印象は最悪だったはずなのに。


_______ピンポ~ン。

「あっ、のぞみちゃんのパパだ!!」

「ちょっと、翼。」


嬉しくてたまらない様子で、翼が玄関まで走って行く。

病人のくせに、元気だこと。

翼はあいつのこと、大好きだもんね。


「おはよう。のぞみちゃんのパパ。」

「おっ、もう元気じゃん、翼。」

「まだお熱はあるから、お外には行けないけどね。」

「そうだな。公園はまた今度な。」

「うん。」


あれ? 何か雰囲気が違う。

どこから見ても、短髪の似合う爽やかなお兄さんだよ、それじゃ。

いつもの作業着じゃないからかな?

普通のTシャツにジーンズでチェックのシャツを羽織ってるだけなのに、その辺にいたら、ちょっと目を引く感じだ。

やっぱりこの人、本当はカッコイイんじゃん。
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