しょうがねーな、まったく。
自分の家のドアを開けるのに、こんなに緊張することってあるだろうか。

どんな顔して「ただいま」って言ったらいいのか、もはやわからなくなっちゃってるし。


頑張れ、私。

翼が待ってるんだから。

何てことない。

笑顔であいつに「ありがとう」って言えばいいのよ!!


「ただいま〜!」

「あ、ママ、おかえり。早かったね。」


え? そんな感じ?

私が帰って来たところで、別に嬉しそうでも何でもない、みたいな。


「お疲れ。腹減っただろ? 」

「あぁ、うん。」

「翼がオムライスがいいって言うから作ったんだけどさ、ママの分は自分でケチャップかけたいんだって。」

「へぇ。そう、なの?」


嘘、嘘? オムライスにするような材料、あったっけ?

あ、でも、ご飯とケチャップと卵くらいはあったかな。

なら、中身はケチャップご飯だけだったりして。

にしても、見た目が美し過ぎて、私が作ったのとは比べ物にならない。


「ママ、見て、見て。」

「うん。」


ケチャップのボトルを握りしめた翼が嬉しそうに言う。

何が始まるのか見守っていると、オムライスの上にぎこちなくハートの形を書き始めた。

なるほど。こういうことなのね。

なんて可愛いサプライズなのかしら。
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