しょうがねーな、まったく。
..........え?

今、何ておっしゃいました?


奥さん、出て行っちゃったの!?

そうだったの!?

サラっとおっしゃいましたが、それはそれで衝撃なんですけど。

驚き過ぎて、ありがたいお説教が一気に吹っ飛んじゃったじゃん!!



「.....そうだったんだ。」

「あぁ、うん。ま、今となっては、もうどうでも良いことだけど。」


いや、良くないと思う。

絶対に良くないって。

あぁ~、その話、聞きたい!!

でも、生憎そこを突っ込むほどの勇気は持ち合わせていない。


「最初は何にもできなかったよ。洗濯機回すくらいはできたけど、本当にそれくらい。」

「そうなの? ホントに?」

「うん。だからさ、必要に迫られれば人って何でもできるんだなって、ここ数年で身を以て実感した感じかな。家事もそうだし、はじめは希のこともどうしたらいいのか全然わかんなくてさ、恥を忍んで、いろんな人に助けてもらったり、教えてもらったりした。」

「そうなんだ。随分、苦労したんだね。」

「まあね。男の俺でもできたんだから、料理くらい、ちょっと頑張りゃできるだろ。苦手とか言わないで、やってみれば。」

「そうしたいとは思うけど、なかなか.....。」


こんな話を聞いちゃうと、私なんてまだまだ甘っちょろいって思わざるを得ない。

この人、若いのにすごいな。

そんな努力をして、希ちゃんを育てて来たんだ。
< 50 / 102 >

この作品をシェア

pagetop