しょうがねーな、まったく。
「意外かもしれないけど、ああ見えて、敦くん、デキ婚だったんだって。」

「嘘?」

「ホント。社会人一年目の大変な時で、しかも奥さんはまだ大学生だったみたい。」

「そうなの!?」

「大学生だから、まだ産む覚悟とかなかったんだろうね。ってか、その前に結婚する気があったかどうかもわかんないし。」

「そうだよね。」

「なのに、いきなり大企業の社宅住まいでしょ。上司の奥さんとかもいるし、付き合いとか超面倒じゃん? 育児にも慣れてない訳だし、だんだん病んでちゃったみたいで、毎日、ケンカばっかりするようになっちゃったんだって。」

「ふ~ん......。」


これで「ザックリ」って、実はかなりディープな話なんじゃない?

にしても、衝撃。

すぐには言葉が出て来ない。


奥さんが子育てに苦戦してたのもわかるけど、社会人一年目っていうことは、あいつだってまだ新人扱いされて四苦八苦してたに違いない。

大手のゼネコンじゃ、残業だってザラにあるはずだし、あいつもまだ自分のことでいっぱいいっぱいだったんだろう。

奥さんのことまで気が回らなかったのは、仕方がない部分もあったと思う。


だけど、放っておかれた奥さんの気持ちも理解できるし、どうにもできない辛さも想像できる。

ましてや、それが、まだ21、2の夫婦だなんて、どれだけ過酷な試練なの?

とてもじゃないけど、安易に家族が壊れてしまったことを責められない。
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