しょうがねーな、まったく。
豊島建設って言ったら、業界最大手の建設会社じゃん。

今だってあちこちの再開発でバンバン大きなビルを建てている、誰もが知ってる大企業だ。

それを棒に振ってまでの今の生活なの?

聞いてるだけでも、何だか切なくなって来る。


「敦史くん、下請けの依頼とかで、よくうちの会社に来てたんだよ。イイ子だから社長に気に入られてたんだけどさ、突然、辞めるって挨拶しに来たから、聞けばそんな理由じゃん? 実は育てる当てもなく、どうしようか迷ってるみたいなことになって、だったらって、社長が猛烈に引き留めたらしいよ。」

「へぇ、そうなんだ。」

「まぁ、結果的にはみんなハッピー? 何より、希が幸せそうにしてるの見ると、ホっとするよね。」

「うん、うん。」

「最初は家事とか育児に関しては、ホントに何にも知らなかったからさ、奥さんと私で、いろいろ協力してあげたんだよ。」

「あ、それは聞いた。ホントだったんだ。」

「うん。まぁ、器用だし、賢いから、何でもすぐできるようになっちゃったけどね。でもぉ、女子の趣味は難しいから、希の保育園グッズは、全部私の手作りぃ。」

「え? あの赤いリボンのアップリケが付いてる可愛いのとか?」

「そうだよ。」

「すご~い!!買ったのかと思ってた。」

「でしょ。こう見えて、その手のものは得意だから。」

「今度、教えて。」

「いいよ。」
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