しょうがねーな、まったく。
あいつがどんどん私の心の中に踏み込んで来ていることは、もう否めない。

もちろん、その気持ちを外に出すつもりはないし、今以上の進展を望んでいる訳じゃないけど。

でも、それも仕方ないよね。

年下なのに、人としても尊敬できる相手なんだから。


これからだって、優しくされる度、ときめいちゃうかもしれないし、一緒にいたらドキドキすることもあるかもしれない。

そうなったとしても私の中で上手く消火すれば済むことだ。

今の関係を壊すくらいなら、このままで十分。

京子さんたちのお気遣いはありがたいけど。


「じゃあ、またね、青空ちゃん。今度会うのは運動会かな?」

「そうだね。今日はありがとう。」


駐車場で京子さん家族と別れ、松澤工務店のロゴが入った軽自動車に乗り込んだ。

シートベルトを着けた途端、もう子供たちは眠そうにしている。


助手席からそれを見守っていると、とても穏やかな気持ちになる。

幸せってこういうことなんだろうな。

家族でお出かけって、こんな感じなのかな。

この瞬間、隣にあいつが座っていると思うと、嬉しいような、ちょっとくすぐったいような..........


だけど、何だかあいつの様子がおかしい。

どうして、なかなか車に乗ろうとしないんだろう。


よく見ると、さっきからドアに手を掛けたまま遠くの方を見つめているような?

あっちに何があるのかな。

暗くて良く見えない。

それとも、何か気になることがあったの?
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