しょうがねーな、まったく。
「わりぃ。ちょっと待ってて。」

「うん.....。」


何か変だよね? やっぱり。

見つめていた方向に向かって行く横顔は、険しい表情だ。

誰かいるの? 何かあるの?

うっすらと不安な気持ちが広がり始める。


暗くなり始めた広い駐車場には、もう数台しか車は残っていない。

一番端のスペースに停まっている黒い車は外車かな?

どうやらあいつは、その車に向かって歩いて行っているようだ。


背中から感じるのは、どう見ても楽しい雰囲気じゃない。

会いたくなかった人? ケンカしてる相手?

すたすた速足で歩いて行く姿からは、嫌な予感しかしない。


あいつが近くまで到達すると、黒い外車のドアが開いた。

降りて来たのは女の人だ。

此処からじゃ良く見えないけど、小柄で華奢な感じがする。


彼女は一体、誰なんだろう?

遠いし、暗いし、どちらの表情もよくわからない。

でも、どう見ても、明るく会話を交わしているようには見えない。


あいつとはどういう関係?

彼女は何者なの?

何故だか、ただの知り合いと話しているようにも思えない。


さっきまで幸せで満ちていたはずが、急に怖くてたまらなくなる。

だって、今まであいつからは感じたことがないような負のイメージのオーラが漂ってるから。

あいつ、大丈夫なのかな。

何か喜ばしくないことが起きているのは間違いない。
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