冷たいキスしか知らない俺に、本当のキスを教えて
それは、携帯電話に…
今日こそ、先輩に告白しようと携帯電話を握りしめる。
直接会って告白する勇気はない。
かといって、メールで告白って言うのも、本気にしてくれなそうだし……。
それなら、せめて電話の方がいいよね……。
先輩と同じ部活の友達から入手した番号。
ただの数字の羅列なのに、それさえかっこよく見える。
ポンッと一回タッチしたら、先輩につながるけれど、いろんな気持ちが頭の中でぐるぐるぐるぐる。
いきなり電話してもいいのだろうか。
やっぱりメールのほうがいいのかな……。
公園についたときには、小さな子供がたくさん遊んでいて、すごくにぎやかだったのに、いつの間にかみんないなくなっている。
足元の影はだいぶ長くなっていた。
それでも発信ボタンが押せなくて、ページを閉じてはまた開いての繰り返し。
フーーーッ……。
画面に向かって、おっきなため息が出た。
ほんの少しの勇気が出ない。
携帯を裏返して、包むように手をのせた。
自分の不甲斐なさにがっかりする。
今日も、告白できそうにない。
もう帰ろう、そう思って歩き出した瞬間、かすかに人の声がして振り返る。
「……ぉ……ぃ……」
……誰もいない。
ここには、私しかいないはずなのに、やっぱり声が聞こえる。
どこから……?
「ぉ……いっ!」
えっ……まさか、ここから?
「呼んだか~?」
私は、手に持っていた携帯を見る。
画面には、私と同じ高校生ぐらいの男子の姿が映っていた。
……えっ?なんで?
「んも~、寝てたんだよ~!起こすなよ~!」
携帯の中に映る男子は、とても不機嫌そうに伸びをした。
信じられない光景に、一瞬パニックになりそうになったが、知らないうちに動画サイトを再生していたと考えれば、こういうこともなくはない。
そうだ、きっとそうだ。
私は、慌ててホームボタンを押した。
……あれ?なんでだろ……何回押しても消えない、停止しない……。
この男子、消えない。
強制的に、電源をオフ。
……それでも、やっぱりいる。
えっと……なにこれ?
もしかして……オカルト的なもの……?
< 1 / 15 >