冷たいキスしか知らない俺に、本当のキスを教えて


ちょっと冷静になろうと、携帯を裏にしてベンチに放置。

私は、ペットボトルのお茶を口にして、ふうーっと息を吐いた。

チラッとベンチに置いた携帯を見る。


……静かだ。

声は聞こえない。

やっぱり気のせい?


そっと近づき、手を伸ばす。


変化は……ない……よね……?


そう思った瞬間、また声が聞こえた。


「おーい!」


えっ?もうなに?なんなの?

やっぱり変化大ありじゃない!


「コラー!呼んでおいて無視すんなーー!」


しかもなんか怒ってるし……これって、無視したら……呪われたりするのかな……さすがにそれは嫌だよ……まだ先輩に、告白していないのに。


私は、裏にしていた携帯を、指でつまんで恐る恐る表に返した。

うわっ、やっぱりいる!
腕組みしてる、怒ってる!


「そうだよ、そうしなきゃ、話せないじゃん!」


「……ご、ごめんなさい」

私が謝ると、怒っていた男子は、ふわっと優しく微笑んだ。

……あっ……なにこの人。すっごい優しく笑うんだ……。


「悪いなって思ったら、すぐに謝ることが大切なんだよ。……おい、きいてんのか?」


「う、うん……聞いてる」


あれ……不思議……全然怖くない。


「で、願い事はなに?」


……願い事?

いきなり、どういうこと……?
怖くはないけど、状況がさっぱりわからないよ。





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