冷たいキスしか知らない俺に、本当のキスを教えて
「私、ナギの力を借りていいかな……」
ナギの目が、キラキラ輝いた。
17歳の腕の線、私のせいで、短くさせたくない。
「もちろんだよ。呼んでくれた人の願いを一つ叶えたら、俺はすぐに帰ることになってる。なんでも叶えてやるから、遠慮なく言ってみ。」
私は、願い事を考える。
ほしいものも特にないし、どうしよう……。
そう思いながら、ナギの映る携帯を見つめていると、今、一つだけ欲しいものがあったと閃いた。
『先輩と両想い』にしてもらおう。
そうだ、それがいい!
わざわざ恥ずかしい思いをしなくてもすむ!
ふられたらどうしようとか、迷惑だったらどうしようとか、怖さとか不安とか全部感じないですむ!
「ねっ、ナギ、私と先輩を両想いにして」
するとナギは腕を組み、真顔で私を見つめていった。
「そういうのってさ、自分の力で掴みとった方がよくねーか?」
「……えっ?」
「できないことないよ。実際に、そういう願いを叶えてやったこともある。でも、人の気持ちを、努力もなしに簡単に思い通りにしても、本当に幸せになれるってこととは別だと思う」
自分の考えを見透かされて、ものすごく恥ずかしくなった。
私は、情けなくなって下を向く。
「好きな気持ちは、自分の口でちゃんと伝えた方がいいと、俺は思うよ。そっちの世界は、それがあるから素敵だと思う。こっちは、いつも一人で行動するから、誰かを好きになるとか、そういうの、ないからさ。俺にしたら、そういうこと経験できんのって、うらやましいと思うよ。まあ、余計なお世話だけど。」