冷たいキスしか知らない俺に、本当のキスを教えて



……ナギの言うとおりだ。

人の心を何かのチカラで変えてもらっても、そんなのちっとも嬉しくない。


「失敗したってさ、自分で頑張った結果だし、それでもいいんじゃねーか?そんなのわざわざ俺に頼まなくても、何度だってチャンスはあるんだし」


ナギは、にっこり笑って頷いた。
私も、それに答えるように頷いた。


「そうだね……ナギの言うとおり。だけど、私には告白する勇気さえもなくて……いつ告白できるかもわかんないの。きっと一生告白なんかできないままかもしれない」


「じゃあ、告白する勇気を授けるってのはどうだ?」


ナギの言葉に、ハッとする。


「ああ、そうそれだっ!私が今、一番ほしいものっ!さすが、ナギだよ!今すぐ、先輩に告白する勇気を私にください!」


「よし、今叶えてやるから目を閉じろ!」


私は、言われるままに目を閉じた。


「そのまま、携帯の画面にキスをして」


前触れもなく現れた、キスというワードにドキッとして、かなり大きな声で聞く。


「えーーーっ?なんでキス!?」


「そうする決まりだから。いいから早く!」


なによ、なんなのもうっ!
私は、恐る恐る画面に唇を寄せた。


冷たい……。
ひんやりした感覚が、唇に伝わる。

私の初めてのキスが、携帯の画面だなんて、悲しいを通り越して笑えてくる。


「こら、笑うな。動くなよ。しばらくそのままでいろ。……じゃ行くぞ、○▼☆×β△α◎∴ウェ~~~~~イ!!!」




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