冷たいキスしか知らない俺に、本当のキスを教えて
「あ、ううん、違う、私が泣いているのは……」
「何もしゃべらなくていいから、さっきみたいに画面に頬をつけて」
ナギは、私に向かって手をかざした。
「あ……うん」
私は言われるまま、画面に頬をつける。
「やっぱりだめか……こんなに近くにいるのに……触れられないなんて……」
ナギの声を近くに感じる。
それだけで、すごく安心した。
「画面は温かい?それとも冷たいの?」
「……冷たいよ。」
「そっか……じゃあ俺は……真友を、温めてあげることさえもできないんだな……」
どうしたんだろう。
ナギの声、切なく聞こえる。
何かあったの?
「ナギ……なにかあったの?」
「いや、なにも……」
私を見つめるナギの目には、涙がいっぱい溜まっているように見える。
「ねえ、やっぱり、なにか……」
私は、ナギの心を知りたいと思った。
「なんで、そんなに俺のことを心配するの?俺が真友を心配してるのに、これじゃ逆だよ」
ナギは、そう言っていつものように微笑むだけ。
「結局戻ってきても、俺は真友に何もしてやれない。挙句に心配されちゃって、妖精だっていうのに……情けない」
「ううん、そんなことない。ナギが戻ってきてくれて、すっごく嬉しかったよ。泣いていたのだって、失恋したからじゃない。ナギに会えないと思ったら、寂しくて涙が溢れて止まんなかったんだよ。ナギは、どうして私の心が分かんなくなっちゃったの?」