冷たいキスしか知らない俺に、本当のキスを教えて


「あ、ううん、違う、私が泣いているのは……」

「何もしゃべらなくていいから、さっきみたいに画面に頬をつけて」


ナギは、私に向かって手をかざした。


「あ……うん」


私は言われるまま、画面に頬をつける。


「やっぱりだめか……こんなに近くにいるのに……触れられないなんて……」


ナギの声を近くに感じる。
それだけで、すごく安心した。


「画面は温かい?それとも冷たいの?」

「……冷たいよ。」

「そっか……じゃあ俺は……真友を、温めてあげることさえもできないんだな……」


どうしたんだろう。
ナギの声、切なく聞こえる。

何かあったの?


「ナギ……なにかあったの?」

「いや、なにも……」


私を見つめるナギの目には、涙がいっぱい溜まっているように見える。


「ねえ、やっぱり、なにか……」

私は、ナギの心を知りたいと思った。


「なんで、そんなに俺のことを心配するの?俺が真友を心配してるのに、これじゃ逆だよ」


ナギは、そう言っていつものように微笑むだけ。


「結局戻ってきても、俺は真友に何もしてやれない。挙句に心配されちゃって、妖精だっていうのに……情けない」


「ううん、そんなことない。ナギが戻ってきてくれて、すっごく嬉しかったよ。泣いていたのだって、失恋したからじゃない。ナギに会えないと思ったら、寂しくて涙が溢れて止まんなかったんだよ。ナギは、どうして私の心が分かんなくなっちゃったの?」





< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop