囚われ姫と金と銀の王子

その時の、王子は4


「ソフィア、私だ。話をしよう、ここを開けてくれ」


扉を叩きながら、私はそう声を掛ける。

だがいつものように返事はない。

いつもはそこで諦め帰っていた私だが、今日は帰る訳にはいかない。

今日こそはこの扉を開ける。


「ソフィア、いい加減にしてくれないか。話が出来なければ何も始まらないじゃないか」


話をしなければお互いを知る事が出来ない。

このままでは好きになって貰えない・・・!


私は必死で扉を叩いた。

しつこさに観念したのか、扉の向こうでソフィアの動く気配が分かる。


「静かにして下さい、何時だと思っているのですか。周りの事を少しは考えて下さい」

「お前がこの扉を開ければいいだけだろう?今日はこの扉を開けるまで私はここを離れないぞ」


そうだ。今日は覚悟を決めてここに来たんだ。

ソフィアを無理矢理どうこうするつもりはない。


ただ会いたいだけ。
ただ話したいだけなんだ。


「・・・他の妻の所へ行かなくてよいのですか?毎日毎日私の所へ来て、みんな寂しがっていらっしゃるのではないのですか?」

「そんな事はお前の気にするところではない。私は行きたい所に行く、それだけだ」

「まあ、なんて冷たい人なんでしょう、他の方が可哀想。私と違ってみなさんあなたを慕っていらっしゃるのに」


・・・どうして他の妻の心配をする?


他の妻が私の事を好いているのは分かる。

けれど私は今、ソフィアに会いたいんだ。

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