囚われ姫と金と銀の王子
その言葉に殿下は項垂れ、ため息を付いた。

私は畳みかけるように更に話を続ける。


「そのくらい殿下の事を慕っていたという事ですよ?本当に殿下はそんな純粋な女心を弄んで・・・」

「・・・そんな事重々に知っていたさ。だから私はちゃんと言ったよ、私にも心から愛する者が出来たと。このような形になって申し訳なかったと。目の前で顔を歪ませて、私の言葉に耐える彼女達の顔を見るのは、正直私も辛かったさ。けれど、この気持ちを変える事は出来ないんだから、仕方ないじゃないか」


「・・・そうですか」

「それくらい私はソフィアの事が!」

「それは分かりました。それ以上は言わなくて結構ですわ」


殿下は苦虫を噛んだように、顔を歪ませる。


私は殿下のその言葉で、決して殿下が義務的に淡々と彼女達に言ったのではなく、ちゃんと自分の気持ちを伝えそして詫びたのだと理解した。


それでもそれに対して怒りを鎮めないのは、彼女達のプライドが傷ついたからなのだろう。


位の高い令嬢として生まれ、順風満帆に過ごしてきた人生が、愚国の王女にその道をずたずたにされたという怒り。

この怒りだけは、どう収めようにも納める事は出来ない。


一番は殿下が私を正妃にしない事なのだけど・・・。


「殿下、やはり私が正妃になるというのは、良くない事なのかもしれませんわ」

「何を言うソフィア!私はソフィア以外の女を妻にするつもりはない!!」


・・・これだものね・・・。

私は息を荒くする殿下を眺めて、軽くため息を付く。


どうするのが最善の方法なのか。

いくら考えても、良案が浮かぶ事はなかった。
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