囚われ姫と金と銀の王子
殿下は勢いよく席を立ち、部屋から出る。

食事の途中でいなくなった事で、食事係の侍女達は慌てた様子で私の周りを右往左往していたが、私はそれを気にせずにただいなくなった殿下の席を見つめていた。


多分これで私が正妃になる事はなくなっただろう。

最初からこうやってハッキリと言って突き放せば良かったのよ。


殿下はエリスの元へ戻る。

そしてエリスがこの国の正妃になる。


殿下もきっとエリスに気持ちが戻るはずよ。


だって、エリスの事を抱けるのだから。

気持ちがないと言ってても、抱けるんだから。


それはきっと、どこかでまだ気持ちが残っているからよね?


そう考える私の心は、針で刺されるようにちくちくと痛んだ。

思わず胸の部分を抑える。



・・・自分がずっと望んできたことなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。


これでいいんじゃない。

私はこの国の王妃になれるような人間じゃない。


愚国の血が流れた、忌みすべき人間。

正妃になんてなれる器じゃないのよ。



そう自分に言い聞かせて、自室へと戻った。

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