囚われ姫と金と銀の王子
それから私は殿下の横で、ただ笑みを浮かべながらその場を凌いでいた。
余計な事は何も話さず会話に頷くだけ。
時折、私に対して遠巻きに嫌味を言う者もいたし、ひそひそと私への悪口を言っているのも、微かにだけど聞こえてくる。
それでも笑顔を絶やす事無く、私はその場でただひたすら時が過ぎるのを待つだけだった。
別に悪口を言われる事も、冷たい目で見られるのも仕方のない事だからそれはいい。
けれどこれがここからずっと一生続くのか、そう思うと精神的に滅入りそうになる。
人の冷ややかな目に晒される地獄。
そんな地獄の毎日が、私には待っている。
夜会が終盤に差し掛かった頃、賑やかだった会場内がさらにざわつき始めた。
人々は入口の扉を向いて、ただならぬ雰囲気を醸し出す。
「・・・どうした?」
殿下もまたその空気を感じ取り、入口の方へと目を向ける。
そしてその先にいた、ある人物を見た瞬間に眉を顰めた。
私もまたその人物に、息を飲んだ。