囚われ姫と金と銀の王子
・・・エリス・・・!
殿下の表情で私はすぐ理解した。
彼女はこの夜会に招待されてはいない、招かざる客であるという事を。
エリスは煌びやかなドレスに身を包み、派手なアクセサリーを身に付け、人々のざわめきも気にせずに堂々と私達がいる場所へと歩いてくる。
顔には満面の笑みを浮かべ、弧を描いた赤い唇がやけに映えていた。
「殿下、このたびはおめでとうございます」
私達の前にやってくると、エリスはそう言って腰を落とし、一礼をする。
殿下の顔からはとっくに笑みが消え、明らかに困惑した表情を浮かべていた。
「エリス・・・そなたはこの夜会には招待されていないぞ?どうして・・・」
「どうしてもこの国のこれからを担うお二人が揃っている姿を見たかったのです。そしてお二人にお祝いのお言葉を掛けたくて、無理を言ってこちらへ・・・。いけませんか?」
そう言ってさらにエリスは笑みを深めた。
その笑みがやけに恐ろしく感じ、背筋が寒くなった。
「そうか・・・それは、どうもありがとう」
そう言いながらも殿下の表情は浮かない。
同じように殿下も、エリスのその笑みの異常さを感じ取っているようだった。