囚われ姫と金と銀の王子
周りは、怒号と悲鳴が響き渡っていた。
逃げ惑う者もいた、その光景に茫然と立ち尽くしている者もいた。
「滅んでしまえ、こんな国なんか!私を選ばない王子なんてこの世にいらない!選ばれた女なんていらない!みんな死んでしまえ!!」
暴れ、なおも刺そうとナイフを振りかざすエリスを、近くにいた騎士達が囲って取り押さえる。
取り押さえられてもなお、エリスはまだ何かを叫んでいた。
けれど、私にはその声がもう遠くで聞こえているように感じて、何を言っているのか分からない。
身体も動かない。
意識もどんどんと薄れていく。
「ソフィア!ソフィア!」
崩れ落ちた私の身体を抱きかかえ、殿下が私に向かって必死に名を叫んでいた。
それに応えたいのに、声を出すだけの力すら入らない。
霞む瞳に映るのは、見た事のない殿下の悲痛な表情だった。