囚われ姫と金と銀の王子
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「エリス、今日は城の使いの者がこちらへやって来ます。ですが、私は乳児院へ行かねばならず、ここにいることが出来ないの。申し訳ないけれど、エリスで対応して貰えるかしら。使いの者から渡されたものを受け取るだけでいいから」
城の使いの者と聞いて、ドキリとする。
それはいつもの通り、朝の礼拝を終えた後のことだった。
この修道院の長でもある、レティス様が部屋に戻ろうとする私を呼び止めて、そう話した。
ここに来てから、ほとんどといっていいほど外の人間と接触することはない。
みんなそれぞれに事情を抱え、この修道院ではみな同じように修道女として生活する人間と、一言二言話せばいい方だ。
レティス様のお願いに少し戸惑ったが、断るわけにもいかず、私は軽く頷いた。
「かしこまりました、シスター。その方はいつ頃来られるのでしょう?」
「いつもは昼過ぎにいらっしゃるわ。裏の扉を5回叩く音が聞こえたら、城の使いの者が来た合図よ。よろしくね、エリス」
ニコリと笑い、レティス様はいなくなる。
正直、城の中の人間と関わるのは気が重い。
いくら許されたとはいえ、やらかした罪は消えない。
私がこの世に生きている事を、良く思わない人間もいるだろう。
何を言われても私は仕方ないと思うが、私に会って、嫌な思いを相手にさせるのが凄く嫌なだけ。
令嬢という身分を捨て、世俗との交わりを経ち、死を迎えるまで神へと尽くす。
そう心に決めてこの修道院へとやってきたのに、こうも早く外の人間と関わらなければいけなくなるとは。
たまらずため息を零した。
会いたくないと思っていても、会わなければいけない。
きっとそれは神が私に科した罰なのだわ。