囚われ姫と金と銀の王子
昼過ぎ。
レティス様の言った通り、裏の扉を5回叩く音が聞こえた。
深呼吸をひとつした後、扉へと向かう。
そして、ゆっくりとその扉を開けた。
目の前には鎧を付け、手に紙袋を持った騎士がひとり。
やけに背が高く、漆黒の瞳で私を見下ろしている。
その瞳にドキリと胸が鳴った。
「例のものをお持ちしました」
騎士は紙袋を差し出し、とても低い声で言った。
「ありがとうございます。確かに受け取りました」
紙袋を受け取り、そう返す。
そして扉を閉めようとした時だった。
「貴女がエリス嬢……、エリス・ゴートランド・ヴェルナル様でいらっしゃいますね?」
久しぶりに"エリス嬢"と言われ、ハッと騎士の顔を見上げる。
漆黒の瞳と、その瞳と同じ色の髪が、外の風にさらっと揺れた。