囚われ姫と金と銀の王子
それから処刑の当日まで、殿下が現れる事はなかった。
もう同じような会話をしなくてもいいんだと、ホッとする私だった。
食事と用を足す以外は、ずっとベッドの上に座って無を貫く。
見張りの騎士が動かなければ牢の中はとても静かで、しん、と耳鳴りのような音しか聞こえない。
目を閉じて、さらに闇の世界へと旅立つ。
無になれば時が経つのは早い。
いつの間にか夜になっていて、何もしていないのにちゃんと意識を手放す自分がいた。
きちんと眠れるのも、きっともうこの世界に未練がないからなのだろう。
早くあちらの世界に行きたいという思いもあるのかもしれない。
いずれにせよ、もう何も考える必要はない。
家族の事も、国の事も、全て。
全てがなくなるんだ。
そう考えたら、心がすっと軽くなった。
―――そして、処刑の日。