囚われ姫と金と銀の王子
ずっと心休まる時がなかった。

常に何かにイライラしてムカムカして、自分の気持ちが落ち着く事がなかった。


だからこの国に捕まり牢に入れられて、環境は最悪だったけど、不思議と気持ちは穏やかに過ごす事が出来たの。

あんなに落ち着いた毎日を過ごしたのは初めてで、そのまま死ねればどんなに良かったか。


・・・なのに。


「今の私の気持ち、わかります?」

「・・・気持ち?」


「前と一緒なんですよ、常に心休まる事がない状態。自分の国にいた時と一緒なんです。こんな事なら牢にいた方がまだ良かったと思うくらい、自分の気持ちが落ち着かないんですよ」


本当に疲れるのよ、女の嫉妬に向き合うのは。

邪魔をするつもりも、彼女達から殿下を奪う気もさらさらない。


だから巻き込まないで欲しいの。

もう私の心を乱さないで欲しい。


話しているうちに感情が昂って、涙がこみ上げる。

でも殿下にその涙を見られたくなくて、顔を見られないように下に向けた。


するとガタッと殿下が立ち上がる音がし、床しか映っていなかった視界に殿下の靴が入る。


思わず見上げると、殿下は少し切なそうな表情を浮かべて私を見下ろしていた。


その表情にドキッと心臓が跳ねる。

その顔は、あの時牢で見せた顔と同じ・・・。

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