囚われ姫と金と銀の王子
「ま、まさか。そんな馬鹿な事が」
「その馬鹿な事が起きているのです。こちらが戸惑ってしまうくらい、普通に生活しております」
その事実に怒りを覚えた私は、そのまま地下牢へと足を運ぶ。
信じられない。
そんな馬鹿な事があってたまるか。
地下牢に近付くにつれ、湿気た臭いが鼻に付く。
衛生状態も良くないこんな場所で、どうやってのうのうと過ごす事が出来るというのか。
鉄格子の向こうに、その女が見えた。
ボロボロに汚れたドレスに身を包み、潤みのない長い髪を適当に後ろで束ねている。
少しやつれたような表情はしていたが、決して顔色は悪くはない。
何よりも、その瞳に目を奪われる。
瞳の奥に隠された強さが、その輝きに滲み出ていた。
「金と銀の王子・・・」
彼女は私を見て、そう呟いた。
どうやら私の事を知っているらしい。
そう呼ばれるのはいつもの事で、普段はそんなに気にも留めないが、わざと不機嫌そうに言葉を返した。