囚われ姫と金と銀の王子
***

翌日も地下牢へと向かう。

彼女は私の顔を見るなり、また来たのか、というような迷惑そうな表情を一瞬浮かべ、そしてその顔を隠すように私に頭を下げた。

私はいつもの通りに問う。


「・・・今日は眠れたのか?」

「ええ、いつも通りでした」


・・・やはり、か。
どうしてこうも平然と・・・。


私からため息が零れる。

それは「死」をも恐れない彼女への呆れと、もう私の望む言葉は聞かれないのだ、という感嘆の思いから出たものだった。


「・・・あの」

「なんだ」

「毎日ここに来て、同じ質問をされても、返す言葉は一緒ですよ?多分、処刑の前日まで私は変わらないと思います」



彼女はそうハッキリと、私の顔を見据えながらそう言った。

その瞳に私は心臓が大きく跳ねる。



その瞳は既に何かを悟り、覚悟していた色であったからだ。

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