大好きな君へ〜私はもう大丈夫だよ〜
通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。
『起きてたのか』
「さっき起きて今学校向かってる」
『俺も今から行くから迎えに行くわ』
「やだ。来んな」
男が迎えに行くと言うと私はすぐにそれを否定した。
携帯から笑い声がする。
『隣の部屋にいるのに何も言わずに行くんだもんな』
「外では関わらないって言ったはず」
そう悠は私の部屋の隣に住んでいる。
お互い一人暮らしのため、何かと助けあっているのだ。
『はいはい。じゃあ気をつけて行けよ』
「悠もね」
『…何かあったら遠慮すんなよ』
通話はそこで終わった。
「ばか」と携帯に向かって小さくつぶやいた。
そのまま携帯をカバンに押し込み、学校に向かった。
学校に着くと、太陽は真上にまでのぼっていた。
つまり、もう昼である。
私はそれを気にも気にもとめず、教室に入った。
今は授業中のため音に反応し、みんなが私の方に目を向けたがすぐに前を向いた。
私の席は窓側の一番後ろ……だと記憶していたが、いつもの私の席の後ろにも机があった。
転校生だとすぐにわかったが、その席に姿はなかった。
「恋、遅刻だぞ」
恋「知ってる」
今のは担任の西条 隆守-saijo takamori-。
私が遅刻するのはいつもなため、特にそれ以上は何も言わない。
私はそのまま自分の席についた。
席についた私はヘッドホンを取り出し、音楽を聴き始めた。
クラシックピアノである。
そのピアノを弾いているのは私の知り合いだった。