白の唄
だんだん声に近づいていき、一番聴こえやすくなったところで先頭を歩いていたリアスの足が止まる。

「おいリアス、一体誰が…」
「あ…」

灰色の瞳が、月明かりに照らされてほんのり金色に光る少女。
あちらも気づいたのか、歌が止み、ゆっくりと振り向く。

「お前は確か…ハノンとかいった…」

痛みも忘れてリアスは思わず口を開いていた。
ハノンは最初、不思議な顔をしていたが、数秒経つと思い出したような顔つきをした。

「ああ…!昼間の変わった人たち!」
「…どうする、ナツ、カナ。変わった人たちだってよ」
「どっちが変わってるか思い知らせてやりますか旦那」
「やめなさい。キャラ変わってんじゃないのよ」

ハノンは上っていた岩からひょいっと降りてリアスたちの前までくる。
そして何故かリアスをじっと見、だんだんと近づいてくる。

「な…なんだよ…?」
「私の歌聴いたでしょ?」
「ん?あ、まあ…」
「怪我治った?」
「へ?」

ハノンはリアスのヒビが入っていたあばら辺りをポンポンと軽く叩いた。
それで初めて気がついたが、いつのまにか痛みがひいていた。

「あ…」
「本当か!?リアス!」
「あ、ああ…痛くない…」

3人が不思議そうな顔をする中、1人ハノンだけが得意気な顔をしていた。

「なんかね、私の歌には人の傷を癒す力があるらしいんだって。私も最初は信じてなかったんだけど実績残しちゃってさ」
「いや、もしそうだとしてもさ、リアスが怪我してるってなんで知ってんだよ」
「え、適当」
「は?」

ハノンは再び岩に登り、座って足を投げ出す。
暗闇の中で、どうしてこんなにも彼女ははっきりと見えるのだろうと思っていた。白いからだ。闇に染まらないほどに。

「そんなの、昼間会った時になんか変だなって思っただけ。だから歌ってたんじゃない」
「俺らが聴いてないかもしれないのに?」

リアスが試すように笑う。
「うん。まあ賭けだったからね。歌うのなんてタダだし、好きだしね」
「……」
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