逆光







寺田総馬は和泉の予想以上に早く気付いた。
また、彼は行動に移すのも早かった。



『19××年×月×日から半年もの間続いたゲリラ掃討戦。そこでナムト国の森林を排除するために使われた除草剤が、今問題となっている薬品なのです』


新聞で、テレビで、ネットで。
今話題となっているのはそのことだった。


和泉は頼んだコーヒーには口を付けず新聞を広げる。
2万円もする新品のイヤホンジャックは、成る程値段の通りに聞きやすかった。

ちょうどラジオの時間に合わせて用意した甲斐がある。


『今日は反TS活動の中心メンバーとして活動している寺田総馬さんをゲストにお送りします』

『よろしくお願いします』


普段耳慣れた声でも電波を介して聞くと少しばかりの違和感を感じる。
和泉は新聞を捲り目当てのページを見つけた。


『そもそも何故除草剤を我が国が使ったのか、その経緯から説明します。ナムト国の南部政権と解放軍との戦いは八年にも及びました。』


新聞にはナムト戦争に関わったあらゆることの統計が載っている。

和泉の国の毎年の軍事予算は財政支出全体の40%を占めていた。

死者数。
行方不明者数。
ナムト国の農村部の被害。
戦争による軍事事業の拡大。

和泉の目が数字の上を滑る。





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