逆光



和泉が今現在交際している寺田総馬と出会ったのは、大学一回生の時だった。


高校卒業後、和泉は難関の一つに数えられる大学に無事合格。
翔は軍に進んだ。

和泉は翔は大学進学組だと思っていたので、兵士に志願したと聞いたときはとても驚いた。


「国に命をかけるつもりはないよ。」


高校三年生の夏、翔の志望を聞いて驚きのままに問い詰めると、そんな返事が返ってきた。


「けど、大学に行って兵役を免れてまで何か勉強したいことがあるわけじゃない。」


じゃあなんでこんな偏差値の高い高校に入ったんだよ、と和泉は少し怒った。
和泉が通う学校は進学校だ。
落ちこぼれない限りほとんどの生徒は大学を目指す。
大学に入れば兵役を免除される。
誰だって自分が可愛いから、戦場には行きたくないのだ。


「まぁ、多分あと五年は今の均衡状態が続くだろうから、大丈夫だって。」


翔はほがらかに笑ってそう言った。

和泉はムスッとした顔のまま、「ふざけんな」と言って翔の腹を殴ることが精一杯だった。
サッカー部主将の鍛えられた腹筋には全く効いてないようだったが。



そうして高校生活は終わり、大学生活が始まった。

高校と変わらず見た目だけばどこぞの箱入りお嬢様の和泉はとてもモテた。
大学は人数が多いので、和泉の玉の輿を叶えてくれる人もいるはずだ。
そんな希望をもって、学生生活をスタートした。

だが、これぞと思う人物はなかなか見つからない。
顔が良くても口が軽かったり、出世しそうになかったり、散財癖があったり。






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