逆光







それなりの人数と話す機会はあったが、和泉のお眼鏡にかなう人物はいない。
大学で相手を見つけるのは諦めて、別の方法で
相手を探すかと思った時。

二つ上に、天才と呼ばれる人物がいることを聞いた。
なんでもその人は最難関の大学を受けるつもりが願書を間違えてこの大学を受けてしまったらしい。
そんな風に普段は抜けてる部分があるが、化学の分野での才能はピカイチらしく、あっという間に和泉がいる大学をその分野で有名にしたらしい。

和泉は別にお金持ちであれば才能や頭脳は相手に求めなかった。
夫として、和泉に恥をかかせない程度の常識と教養があればいい。

そんな和泉が寺田総馬に興味を持ったのにはある理由があった。




「除草剤?」

「そう、南部の国の植物が綺麗だって一昔前に流行したことがあったじゃん。でもあの国の植物って生命力が強くてこの国の除草剤じゃ全く枯れないんだよね。」


自分の手柄でもないのに男は誇らしそうに語る。

ふぅん、と和泉は男に奢ってもらったカプチーノを飲む。


「寺田総馬のことを知りたいんだけど。」
そう言えば男は喜んで教えてくれた。

彼らの間では和泉とお茶することはある種のステータスになるらしい。
良い気はしないが和泉もそこを利用して情報を得ているのでお互い様だろう。


「寺田は一回生の時に南国の植物にも効果がある除草剤を開発したんだよ。」


それで一時期繁殖しすぎてこの国の自然環境を変化させていた南国植物は少なくなった。
ただ、結構強力な薬だから人間にもそこそこの害があるらしい。

除草剤を撒いた後何年かはその地域は立ち入り禁止にしなければならないという。






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