逆光
「それであいつは国のトップに目を付けられたってわけさ。」
噂によるとかなりの研究費をもらってるらしいぜ、と男は悪い顔で言う。
目を付けられた。
つまり、国は寺田総馬の才能を評価したというのだろう。
そこそこ裕福な家庭出身で、若いながらも国のトップからも一目置かれる男。
なかなか好条件じゃないか。
和泉は一つ頷き、カプチーノを飲み干す。
「色々教えてくれてありがとう。」
コーヒーもご馳走様、とにっこりと微笑んで言えば、男は顔を赤くして、いや、そんなこと、などと口ごもる。
今までの経験から言って、和泉が上品に微笑みかければ世の大半の男性がキュンとくるのだ。
やりやすいことこの上ない。
我ながら嫌な性格だな、なんて思いながら和泉はカフェを後にした。