逆光
空
島さんと再会したのは偶然だった。
和泉が担当する雑誌の特集で各社の新商品のチークを取り上げることになった。
流行のものではなく、自分の顔、髪型に合わせたものを紹介する企画だ。
顔の形、目鼻口に合わせてタイプ別にし、それぞれに一番合うメーカーをピックアップする。
その企画会議で、あるひとつの化粧品会社の社員としてやってきたのが島さんだった。
新人ということで経験なのか、会議での発言は彼女の上司のものがほとんどだった。
大学時代会った時よりも髪は伸び、すっきりした顔はあの時のままだった。
総馬の話では、彼女は今も反TS活動を続けているはずだ。
会議が終わってから、和泉は島さんに声をかけた。
「島さん、久しぶり」
「お久しぶりです」
にこやかとまではいかないけれど、最低限の礼儀としての笑みをその顔に貼り付けていた。
和泉としては挨拶をしたらさっさと別れるつもりだった。
けれど意外なことに話を続けたのは島さんだった。
「結婚なさるんですね。おめでとうございます」
「え、あぁ、ありがとうございます」
総馬からもらった指輪はつけていない。
大方、総馬本人から聞いたのだろう。
彼女は反TS活動でも重要な役職に就いてるらしいし、交流は頻繁にあるはずだ。