逆光






「今回の件で、ちょっと失望しました」


そう言って、鍋からすくい上げた豆腐をフーフー冷ます。


「和泉さんに好きだって言われただけであんなに舞い上がるくせに、何でそこで引いちゃうんだって感じです。一生俺のそばにいろ、くらい言えばいいのに」


島さんはブツブツとそう言っている。

好きだ、なんて言ったことがあったか?
基本受け身な和泉は、普段その類のことは口にしない。
付き合っているのだから言うべきなのだろうが。

しばし考えてから、あぁ、と思い至った。
プロポーズの時だ。
何となく口から漏れた「好きですよ」の言葉。

そうか。
それに総馬は喜んでいたのか。
なんとなくむず痒くなり、和泉も鍋に手をつける。

ハフハフと白菜を頬張りながら考える。





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