逆光
エイプリルに着いたら、大谷は先に入っていた。
来て早々和泉が再婚のことを問えば、大谷はあっさり答えた。
「あぁ、うん。総馬から頼まれたよ」
「やっぱり」
モグモグと田楽をつまみながら話す。
甘じょっぱい味噌がとても美味しい。
大谷は酔ってもいないのに、脂下がった表情で和泉を見つめている。
その生ぬるい視線に耐えられなくて、思わず見つめ返す。
「何ですか」
「んー、和泉さん総馬のプロポーズ受けたんだね」
「はい」
確認するようなくちぶりにぶっきらぼうに返す。
指輪は今日はつけてきている。
可愛らしく輝くティファニー。
「ティファニーですよ。断りませんよ」
その言葉に、大谷はさらにおかしそうに声を上げる。
「相変わらずいじっぱりだね」
「は?」
「もう別れる気なんかないくせに」
酔ってんのかこいつ。
呆然とそう思ってしまった和泉は悪くないはずだ。
だって、まさか、よりにもよって大谷にそんなことを言われるとは。
誰よりも和泉と近しい生き方をするであろう大谷に。