逆光






ナムト戦争が終わり、兵士たちが帰ってきた。

反TS活動も着々と進んでいる。
それでも、以前よりはメディアに取り上げられることは減った。

その理由が、帰還兵のPTSDの問題だ。
全員がそうなるとは限らない。
それでも、多くの人の心に戦争は爪痕を残した。


「ごめんなさいね。まだ落ち着いてなくて、とても人に会わせられる状況じゃないの」


柔らかい声で、そのくせ突っぱねる意思がビシビシと感じられる。
その証拠に、翔の母親は和泉の返事を聞かずに電話を切った。

翔の話によれば元々母親とはうまくいってなかったらしい。

そりゃあそうだろう。
進学校上位の成績で、兵役免除の大学にも行けたのに、わざわざ兵士になったのだから。
おまけに、戦場に行ってPTSDになって。

和泉はため息をついた。
メディアでも度々取り上げられていたが、友人としてどう力になればいいのか分からない。

会いたいとは思うが、家に行っても翔の母親に門前払いされるだけだろう。






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