逆光
「やっぱり行くんですか?」
「ん?」
「ナムト国に」
「うん、うん……は?」
何度か頷いてから、総馬が勢いよく和泉の方を振り向いた。
和泉が総馬のナムト行きを知っていたのがよっぽど意外だったらしい。
「な、なんで和泉が知ってるんだ」
「島さんから聞きました」
「島さんが!?」
あっさり島さんを売った。
総馬は顔をしかめてモゴモゴ口を動かして、諦めたように残りのココアを飲み干す。
やけくそ気味なその態度に和泉はふいに笑ってしまった。
最近は難しい顔ばかり見ていたから、あたふたしている総馬がなんだか懐かしかった。