逆光




「ダイオキシンを含まない除草剤が出来たら、な」


そう、言い訳するように言った。

ビクビクしている。
和泉から別れ話を切り出されるのでは、と思っているのだろう。
和泉は安心させるように総馬の手を握る。


「結婚しましょう」

「……そうだな」

「再婚相手は私が自分で探します」

「島さんはそこまで話したのか」


どっと総馬の顔に疲れが見えた。

けれど、すぐに仕方ないな、というように笑った。
和泉も笑いかえす。

期限付きの結婚生活になるだろうに、総馬は本当にいいのだろうか。

その思いは胸にしまっておいた。


結婚式は数ヶ月後の四月に挙げた。
小さな教会で親族も友人も招かない二人だけの結婚式だった。

みんなでワイワイ騒ぐ状況を和泉が好まなかったからだ。
総馬は好きだろうが、和泉に合わせてくれた。

この人は、何も返さない和泉のような女性にどうしてここまで尽くしてくれるのだろうか。

キスした後に、幸せそうに微笑む総馬を見て、和泉はそう考えていた。





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